みどマメモ

九州の大学で医学を学んでいます

フルーツタルト・桜衣乃の膀胱を、救いたい


※前回記事と比べて全体的にかなり真面目です!
梶野穂歩以外の特定の人々、キャラクターを貶める意図はありません!
一応まだ学生で、専門家ではないのでご承知を!


スゥッ…


おちこぼれ系IDD(異常独身男性) 、MDMA


♪チュッチュッチュルチュッチュールランラン♪

 

え〜みなさんこんばんは、今日の議題は

 

♪チュッチュッチュルチュッチュールランラン♪

 

いの先輩の〜


「催し〜!」「お漏らし〜!」「おしっこ〜!」「NH3〜!」「あっ♥」


♪チャンチャンチャラララチャンチャンチャラララチャンチャンチャンチャンチャーンチャンッ♪



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この記事は、ご覧の資料を参考にお送りします。

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Abstract

深夜番組「おちこぼれフルーツタルト」の新しい企画、決まったナ・・・


Introduction

桜衣乃(さくら いの)とは、まんがタイムきららキャラット芳文社〉にて連載中の「おちこぼれフルーツタルト」に登場する、アイドル志望の高校一年生である。

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バストはDカップ
無類の女の子好きで作中でも数々の問題行動をとっている彼女であるが、彼女の最大の問題点は「おむつまわり」であろう。我々は、彼女の排尿習慣を観察し、彼女の頻回に渡る排尿異常の背景にどのような原因があるのかを探った。

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↑これ、便座口が広すぎてお尻がハマりこむを通り越して便座に座れてすらいなくない?

Method

アニメを観て、原作単行本を読んだ。その上で、彼女の尿意切迫感や失禁について考えられる医学的原因を列挙し、それぞれについてガイドライン等を参照しながら妥当性を検討した。

Result

桜衣乃の排尿習慣について

  • アニメ第3話(原作第1巻)において、ライブ前に「緊張すると尿意を催す」とされている。
  • 同ライブ後において、「緊張が解けても尿意を催す」とされている。
  • アニメ題7話(原作第2巻)のレコーディングにおいて、「緊張するとお漏らしする」とされている。
  • また、「水分をとらないようにしたほうがいいのではないか」という解釈をされていた。
  • 尿意を堪えることに快感を覚えているわけではないとのことであった。
  • 緊張時の急な尿意切迫感は幼少期からあったとのことであった。
  • 先のライブにおいて、尿を我慢しながらも僅かな失禁があったとのことであった。
  • アニメ第9話(原作第2巻)の大宮ライブの朝、お漏らしがあった(夜尿か)。当日は、替えの下着で対応されていた。

以下、原作3巻以降の未アニメ化部分のネタバレにつき白文字で

  • 原作第3巻のライブのステージ直前、尿意を抑えきれず茂みの中で簡易トイレに用を足した。
  • 原作第4巻の特訓シーンで、ランニング中にトイレに立ち寄り迷子になった疑惑
  • 原作第5巻ねずみ荘の掟その12より、無事に学校生活を送るためには替えの下着と紙パンツの用意が必要とのこと
  • 原作第5巻でテレビ局を訪れたとき、緊張だけでなく興奮でも尿意を催すことを発見。
  • 原作第5巻の本番前、トイレに行くのを忘れ、我慢しながら少しずつ失禁する。
  • 原作第5巻の本番中、失禁後であっても排尿刺激に対して我慢できるということが明かされる。
  • 原作第5巻のステージ終了後、大勢の観客の前で盛大に失禁してしまう。

Discussion

1. ヒトの生理的な蓄尿・排尿の機序

簡潔な記述を心がけますが、頭がパンクしてしまいそうになった方は、一旦Discussionまで飛んで必要であれば戻ってくるようにしてください

(1)尿ができるまで

血中の有機酸や窒素化合物といった老廃物は、物質を選択的に血管外に通過させる腎臓の毛細血管を介して血中から尿細管腔に送られる(図中①)。そこで濾し取られた老廃物を含む水溶液のことを原尿と呼ぶ。原尿は1日におよそ200L産生されているが、その99%は必要物として再吸収され(図中②)、老廃物を高い濃度で含む尿へと濃縮される。従って、尿として体外に排出される量は1日あたりおよそ1~2Lである。

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①腎動脈への灌流 ②原尿の再吸収 B:膀胱

カフェインは腎血流量を増やして尿量を増やす。バソプレシンは再吸収量を直接増やし、交感神経β刺激(緊張すること)は腎臓傍糸球体装置からのレニン分泌を促進し、めぐりめぐって再吸収の量を増やし、いずれも尿量を減らす。

(2)尿を出すまで

尿が膀胱にたまると、その刺激は膀胱から大脳に届き(図中①)、大脳は蓄尿(尿こらえ)を始める。具体的な途中経路は省くが、交感神経の活性化(図中②)と仙髄神経の活性化(図中③)を介し、排尿筋を弛緩させ、尿道括約筋を収縮させる。

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①尿意 ②大脳(と脳幹)による交感神経の脱抑制 ③大脳(と脳幹)による仙髄随意神経の脱抑制

交感神経が働くと蓄尿されるということであるので、集中状態では尿意を感じにくい、あるいは比較的尿意をこらえることができるということは読者も実感するところであろう。逆に、帰宅時に家のドアが近づけば近づくほどに抑えきれなくなる尿意や便意を経験したことがある者もいると思うが、それは自宅トイレが近づくほどに徐々に緊張状態が解けていく様を表していると考えられる。

(3)尿を出すには

大脳が排尿にGOサインを出すと、蓄尿が終わり一転攻勢排尿に移る。こうなると、交感神経と仙髄随意神経が抑制され、逆に副交感神経が活性化される。すると、排尿筋が収縮し、尿道括約筋は弛緩し、尿が排出される。

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①大脳と脳幹による交感神経の抑制 ②大脳と脳幹による仙髄随意神経の抑制 ③大脳と脳幹による副交感神経の活性化

副交感神経刺激が排尿の直接のトリガーであるので、一部の風邪薬など、アセチルコリン系を抑制する薬剤の副作用で排尿が困難となることがある。また、膀胱炎による刺激は膀胱を頻回に収縮させ、頻尿の原因となる。
ヒトは、3歳頃に排尿自立してからずっと、トイレ以外の場所では尿を出さないような習慣を獲得しているため、生半可な状況では人前で排尿してしまうことはない。排尿は大脳が排尿の意志を明らかにすることで始まるが、この長期的な習慣の甲斐あって、相当に壮絶な状況でなければ人前で失禁してしまうことは無いと考えられる。(外で服着てる状態では、わざと漏らそうと思っても漏れなくないですか?)

2.ヒトの蓄尿・排尿の異常

ここも同じく、簡潔な記述を心がけますが、頭がパンクしてしまいそうになった方は、一旦Discussionまで飛んで必要であれば戻ってくるようにしてください

(1)頻尿・多尿

頻尿は、排尿が一日8回以上あることと定義されている。この原因には、①膀胱容量の減少②過活動膀胱(後述する病気)③炎症などによる膀胱粘膜の刺激④多尿などがある。頻尿の原因は膀胱の異常や尿量の異常が考えられるということになる。

多尿は、一日の尿量が2500mL以上であると定義されている。多尿を見た場合は、尿浸透圧を測定し、高張尿であるか低張尿であるかを見る。等張〜高張尿であれば糖尿病などの浸透圧利尿か腎不全や利尿薬投与などのナトリウム利尿が考えられる。一方で、低張尿であれば正常、心因性多飲症、尿崩症が考えられるので、更に水制限試験、高張食塩水負荷試験バソプレシン試験などの検査を重ねる。以上を鑑みるに、多尿の原因は「腎血流量の増加」か、「原尿再吸収の異常」であるとわかる。

(2)尿失禁

尿失禁は、不随意な尿漏出であって社会生活に支障をきたすものと定義される。大まかに理解するならば、蓄尿系のどこかに障害が生じたものである。病態に応じていくつかのグループに分類される。代表的なものには

  • くしゃみなどの腹圧上昇に応じて失禁してしまう「腹圧性尿失禁」
  • 急にこらえきれない尿意が生じてトイレまで間に合わず漏らしてしまう「切迫性尿失禁」
  • 尿が出にくくなったことで尿が貯まりすぎて逆に少しずつ尿漏れしてしまう「溢流性尿失禁
  • 蓄尿と排尿の神経反射が障害されて無自覚なまま漏らしてしまう「反射性尿失禁」

などがある。QOLを損ねる程度が高く、正確な診断や治療が重要な疾患の一つである。正確な診断には尿流動態検査(膀胱系の精密検査)が有用である。

(3)尿意切迫感

急にこらえきれない強い尿意が起こることを尿意切迫感と呼ぶ。過活動膀胱の診断基準となる。

3.本症例の状況と鑑別疾患

0.桜衣乃の排尿習慣
  • 幼少期より、交感神経刺激で尿意が催される
  • 随意的な尿こらえの機能に障害は認めない
  • 膀胱容量を超えた尿が少しずつ漏れることがある
  • トイレが間に合わず漏らしてしまうというエピソードは日常的にはない
  • 夜尿することもある


これらの排尿習慣に生理学的な説明を加えると次のようになる。

  • 通常であれば、交感神経刺激があれば、腎再吸収の増加と膀胱弛緩により蓄尿が促進されるが、そのような状態にない
  • 仙髄より上位の排尿中枢の問題は考えにくい
  • ある程度尿が溜まった段階で、外尿道括約筋による圧を上回る膀胱内圧が生じている可能性がある。
  • 患者QOL は損なわれているも、臨床的な重大性はあまり感じられない
  • 心因性多飲は夜尿をきたしにくいことより、器質性疾患も疑う?

以上の排尿習慣および生理学的病態を鑑みると、桜衣乃が有しうるいくつかの疾患が鑑別に挙がる。医療機関に受診があれば、これら、あるいは他の疾患を鑑別しながら今後の対応を考えていく。

1.過活動膀胱

過活動膀胱は、尿意切迫感と頻尿、切迫性尿失禁の既往から最も疑われる器質的疾患である。文献によると夜尿も矛盾しない。根本的な原因は不明であり、様々な機序により膀胱が過剰に興奮してしまうことを病態としている。有病率は比較的高いが、好発が高齢・女性・肥満であり、彼女と一致しない。しかし、臨床経過が類似しているため鑑別に含めることとする。本疾患は患者QOLを著しく害するが、幸いにも行動療法や薬物療法によって改善しうる疾患であるので、正確な診断と治療を行われたい。診断は、正確な問診を行い、尿流動態検査のうちの膀胱内圧検査によって排尿筋過活動を証明する。膀胱訓練や飲水制限、骨盤底筋体操などの行動療法を行い、奏功しない場合に抗コリン薬やβ3刺激薬による薬物療法を行う。
以下、桜衣乃の排尿習慣と紐付けて考察をすすめる。なお、彼女が尿意切迫感を訴えていることを前提とする。

  • 通常であれば、交感神経刺激があれば、腎再吸収の増加と膀胱弛緩により蓄尿が促進されるが、そのような状態にない
  • 仙髄より上位の排尿中枢の問題は考えにくい
  • 心因性多飲は夜尿をきたしにくいことより、器質性疾患も疑う?

↑過活動膀胱と矛盾しない。

  • 膀胱容量を超えた尿が少しずつ漏れ出している→ある程度尿が溜まった段階で、外尿道括約筋による圧を上回る膀胱内圧が生じている可能性がある。

↑これも過活動膀胱による排尿を随意筋である外尿道括約筋の収縮で必死に堪えているときに見られておかしくない症候である。

  • 患者QOL は損なわれているも、臨床的な重大性はあまり感じられない

↑まずは行動療法による改善が見られるかの経過観察の適用か。

このように、彼女の排尿習慣とも大きく矛盾せず、彼女の持つ疾患を疑うにあたり過活動膀胱は十分に鑑別に挙げる余地がある。

2.尿崩症

バソプレシンの作用がうまく働かないことで、腎臓での再吸収がうまくいかないことによって多尿となる疾患である。原因不明、遺伝性の尿崩症もあり、女子高生にも発症する可能性は(僅かながら)ある。この疾患には華々しい多飲が出現し、薄い尿が大量に出続けることが特徴である。彼女に多飲の描写がないことから鑑別としての順位は落ちる。尿検査でスクリーニングし、高張食塩水負荷試験と水制限試験によって中枢性尿崩症、腎性尿崩症、心因性多飲症とを鑑別する。中枢性尿崩症の治療にはバソプレシンを補充し、腎性尿崩症の治療にはサイアザイド系利尿薬を投与する。

3.糖尿病

インスリン分泌の低下やインスリンが効きにくくなることにより高血糖が持続する疾患である。高血糖による血漿浸透圧の上昇は、身体に水が足りていないと錯覚させ、喉の乾きによる多飲をもたらす。その結果多尿が見られる。彼女の年齢であればI型糖尿病が発症する可能性がある。糖尿病であれば口渇多飲多尿の他に全身倦怠感や体重減少なども見られることがあるので、問診でこれらの症候を聞き出したい。頻度的にも彼女の様子を見る限りでも糖尿病である事前確率は低いと考えられるが、尿検査で簡単にスクリーニングできるので尿検査をオーダーされたい。

4.心因性多飲症

この疾患では尿崩症と同じように薄い尿が大量に出てくるが、その原因は単なる「水の飲みすぎ」である。水制限試験によって多尿が改善される。女子高生ということで器質性の疾患を除くのであれば事前確率は比較的高くなりそうではあるが、飲み過ぎというエピソードが作中では認められず、鑑別としては過活動膀胱に劣るか。

5.尿路奇形

幼少期から続く蓄尿・排尿異常から鑑別に挙がる余地がある。病歴や検査から疑った場合、造影検査などの詳細な検査が必要になることも多く、commonな疾患でもなく専門性が高すぎるため専門医に紹介する必要がある。

6.夜尿症

小学6年生のおよそ5%がお漏らしをしているという報告があるほどに有病率が高い疾患である。膀胱容量の個人差やバソプレシンの効きやすさなどが関連しているとのことである。作中に本格的な夜尿の描写がないため判断がつかないが、本疾患も鑑別に挙がるだろう。

Conclusion

まずは過活動膀胱を念頭に入れながら問診を十分に行う。必要であれば、水制限試験や尿流動態検査などを行い、心因性のものであるか器質的な膀胱の異常があるかどうかを精査すべきと考える。


・・・・・・

お疲れさまでした。



ホホ「JKアイドルの膀胱の検査…これは〝数字〟 が獲れる…!」


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アニメオタクの総意

10.尊厳に対する権利

1.患者の尊厳とプライバシーを守る権利は、その文化および価値観と共に、医療ケアと医学教育の場においても常に尊重されるものとする。

(世界医師会 患者の権利宣言より)

よからぬことを考えた人は反省してください(世界医師会より)


ドラえもんに裁かれる画像)


おわり