みどマメモ

九州の大学で医学を学んでいます

【1日で終わる?】25歳東大退学童貞医学生が「新理系の化学問題100選」タイムアタックに挑戦した話【後藤ひとりあり】

アローラ MDMAと申します。

今年も東大模試の季節がやってまいりました。今年はお休みがとれたので現地組で参加させていただいたのですが、やはり予備校のピリッとした空気は良いものですね。自分は彼らに胸を張れるような立派な大学生をやれているか、気が引き締まる思いがあります。

焦っちゃってダメダメだった数学とか、ひっかけ肢に全部釣られて散々だった英語とか、感覚読みしかできなかった古典とか、以前の自分にはあってはならない結果に少し落胆しながら、これ戦えてるんじゃねと確かな手ごたえがあった科目が1つ。それが

化学です。

化学は、得意でした。自分は普段からバランス型ですよみたいな顔をしているのですが、実は化学だけちょっと頭抜けてる感じです。60点満点でありながら、東大本試で数学(120点満点)超えの点数を叩き出した科目でもあります。*1


模試を受け、やっぱ化学で無双するの楽しすぎぃぃ~~~~!*2と感じたということで、次の模試までパルス的負荷を掛けて化学を伸ばしてみることにしました。道楽で勉強できる身分が最強すぎる。


そこで、「新 理系の化学問題100選」という問題集が部屋にたまたまあったので、これを進めてみることにしました。
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レシートは表紙裏に貼り付ける派

ただやるだけではエンタメ性に欠けて三日坊主になってしまう可能性があったので、「新 理系の化学問題100選」タイムアタックという企画として文字に残してみることにしました。これが意外と盲点なようで、類似記事は見つかりませんでした。こういう記事を探していたんだ!という人はいるのでしょうか。お力になれたらうれしいです。


今回はただただ1冊の問題集のタイムアタックの様子をレビューするだけの日記になります。業者っぽさがないレビュー記事を目指そうと思います。残念ながら、医学のネタとかアニメキャラ解剖結果とかの話は出てきません。受験生に届け!


※可読性を上げるために問題番号に全角括弧を使っているので、それに伴って全角数字を使用している箇所がたくさんあります。半角英数字警察の同志のみなさん、申し訳ございません。
※また、問題演習は大学での業務を終えて帰宅した後に自宅で行なっております。こういうストレス発散をする男もいるのです。研究に支障を来さない範囲で企画を進めているということをご理解ください。筋トレとスイミングの時間が犠牲になりました。

準備物

以下すべて駿台文庫

  • 新理系の化学問題100選
  • 原点からの化学 化学の計算
  • 原点からの化学 化学の理論
  • 原点からの化学 無機化学
  • 原点からの化学 有機化学

レギュレーション

  • 計測はStudyplusで行う。
  • ノートに問題を解答し、採点を行い、必要であれば解説を読む。ここまでを計測に含める。
  • TA開始時の実力は、原点からの化学シリーズを一周した段階
  • 別教材を参照している時間は含めない。
  • 概ね正解であった大問には○、解答の大筋を合わせられず問題の本質部分で失点した大問には×、その中間の出来であった大問には△のマーキングを施す。

演習の記録とコメント

○△×は筆者の出来栄え

1日目(1~7)【2時間20分】

1)○ 2)○
原子量やモルの計算問題の地帯
化学の入門分野と言って侮るなかれ、2)の東大の計算問題は工夫しなければいつまでも解けないので、ここで経験できて良かった。

3)× 4)○
化学結合の物理的背景地帯
原子物理学や電子軌道を用いた化学結合論の2題。市販の受験用問題集でこれを特集してるのはかなり特異的なのではないだろうか。

5)○ 6)○ 7)△
単位格子系の問題たち
まあ単位格子の問題は、与えられた格子の形を見てその都度考えてもいいのですが、「原点からの化学 化学の計算/化学の理論」で、配位数やイオンの配置のパターンについて勉強したら、より確信をもって問いに答えられる自信がつきました。配位数なんて今まで意識したことがなかったので目から鱗でしたね~。

2日目(8~15)【1時間52分】

8)△ 9)△
分子の中で電子がどうなってますかみたいな問題たち
2022秋OPで基本的な電子式が問われていたことを思い出しながら・・・(まさかの誤答)。電子式の体系的な描き方は「原点からの化学 無機化学」の最初のほうに載っています。僕はこれをド忘れしていました。見慣れない分子どうしの分子間力を考えさせられるので、その意味で思考の型を増やすことができるため、ここも侮るなかれですね。

10)△ 11)× 12)× 
13)○ 14)○ 15)△
気体に関する問題たち。
序盤はTが違うのにT同一で計算したり条件のミスばかりで反省。後半から後述のやり方をつかみ、一転良い調子に。12)は気体の有名問題で新演習でも苦戦した記憶がありますが、方針としては一本道なんだなということに気づけたのは大きかったですね。
気体の問題では条件に応じて状態方程式を簡略化する合理的なフローチャートを持っておくことが、頭の中を整理しながら計算を進めるために大事みたいです。これは「原点からの化学 化学の計算」の気体のセクションに詳しいです。

3日目(16~22)【2時間】

16)○ 17)○ 18)○ 
19)○ 20)△ 21)○ 22)△
溶液に関する問題たち。
溶液難しいイメージがあったけどなんか解けた
でも浸透圧の問題で二次方程式解かなくちゃいけなくなるパターンは初見かもしれないので良い経験ができました。

4日目(23~31)【3時間14分】

23)△ 24)○ 25)○ 
26)○ 27)×
中和反応式とか半反応式とか書いてあとはpH計算とか滴定の計算とかをさせる問題たち。
まさかの弱塩基のpH計算でつまずいたのとクロムの性質が抜けてたところで足元をすくわれた形

28)× 29)× 30)△ 31)×
無機イオンとか塩に関して分析する無機化学ゾーン
ここは知識ゲーなところが強いので現役から6年退いた身としては厳しい。ぶっちゃけ知識があったとしてもパズル力がないと完答できなさそうな重~い問題ばかりなので、力自慢の受験生に非常におすすめ。

5日目(32~33)【32分】

32)× 33)○
無機イオン分析の続き。
無機イオンが絡む化学反応式の学習には、youtubeのパスラボさんが出しているこの動画がおすすめです。

youtu.be


僕も33)まで終えて危機感を感じてすぐにこちらを視聴しました。また、無機イオン分析に必要な知識については、「新 理系の化学(上)」の終盤のページにコンパクトかつ詳しくまとまっています。

6日目(54~63、34~35)【4時間4分】

54)△ 55)△ 56)△ 57)○
58)△ 59)△ 60)○ 61)△
62)× 63)○
元素別各論のコーナー
無機化学をいったん全部やってしまおうという意図で、33)からワープです。直前に観ていたパスラボさんの動画がめっちゃ効きました。それでもさすがに細かい穴埋め知識の抜けがチラホラ。主要な工業的製法はカバーできていたはず。見た目よりも網羅性は高いと感じました。

34)△ 35)○
熱化学方程式を使った計算問題
とにかく計算が重かったですね。寝ぼけていたのもあって検算のたびに計算結果が変わって地獄でした。3~4桁の足し算引き算なのに・・・。解答ではエネルギー図が用いられていました。ちなみに、僕はエネルギー図描かない派です。

7日目(36~46)【3時間16分】

36)○ 37)×× 
熱化学のまとめの2題。熱化学理論と激重計算問題。

ちなみに、僕はエネルギー図描かない派です。

昨日こんなことを言っていましたが、

ぼっち・ざ・ろっく!はいいぞ

格子エネルギーの問題では状況整理も兼ねて作図したほうが自分に合ってるみたいです。まあ、37)ではもう一捻りされてて状況把握と現象理解できてないと作図しただけでは簡単には解けないので、1問でとても視野が広がった気がします。

38)○ 39)△ 40)○
反応速度論パート
与えられた基質濃度変化の推移から反応速度式の係数と次数を求めるタイプの問題は2022秋OPに出てましたね。39)ではこの設定のときに対数表を与えられていなければどうするかという問題です。これも経験できて良かった。

41)○ 42)○ 43)○
ルシャトリエの原理・気体平衡
この分野は定性的に考えるだけで割と取れるからすき

44)△ 45)× 
酸塩基の電離平衡
混合酸の電離平衡の計算がスムーズにいかなかったところは要反省、




ここまで一週間で、56問/17時間18分 == 100問/30時間54分

8日目(46〜48)【48分】

46)△
酸塩基の電離平衡
後半の問題で「物質収支と電気的中性の保存」を徹底できなかったことで失点。頑張ろう。

47)○ 48)△
難溶塩の溶解平衡
なんかみんな苦手にしてるイメージの溶解度積にしては計算はOK 記述部分を理解しよう。

9日目(49〜53)【1時間19分】

49)× 50)× 51)○ 
52)△ 53)○ 
電気化学
電気化学は系全体で見たときの酸化剤と還元剤を決定すれば半分勝負がつくのですねと感じました。演習初期の方は系に存在する物質の酸化還元反応式などあまり考えず、なんとなく極になりそうな物質を決め打ちして半反応式を思い出していた(上級者ならそれで良いと思う)のですが、先生の解説を読み改めました。電気化学の残り半分は流れる電流値の計算でしょうが、それはまあ大丈夫でした。


10日目(64)【22分】

64)○
アルケンの構造決定
A〜Mまで13分子の構造決定ですが、ヒントが多くて読解が大変だった意外にはまあ簡単めだった気がします。
それでも結構時間かかってしまってるので、炭化水素の構造式の書き下しについては身体で覚えたいところですね。

11,12日目( )【0秒】

忙しい日・気分が乗らない日というものはあります。

13日目(秋実戦1日目)【2完2半】

国語良い感じ(○~△, △, ○~△)
数学悪くはない(○, ×, ×, ○, △, △)

14日目(秋実戦2日目)【リスニング10/30】

物理ヤバめ(70 min)(△, ×, △)
化学そこそこ(80 min)(△,○, △, △, △, ○)
英語さようなら(記号16/58 + 記述?/62)

化学に関しては、3-IIのミカエリス・メンテンの式は結果を知っているので秒殺…しようとしたら、問題を最後まで読んでなくて無駄なところで計算と見直しをしてしまって19分で完。専門分野だったのでこれはイタい。
1-IIは糖、これも生化学でやったからアドが取れる…と思いきやセルロースが1-6結合だとずっと誤解しててそこだけアウト、これは100選高分子をやってれば防げましたね。
2-IIのリン酸緩衝液のpH計算はまあ似た設定のpH計算を46(確か)でやっていたので正答、G6P生成反応の熱化学方程式は例の教訓を重んじて状態図を書いたら一発だったのでこれも正答。この2題が中問のラスト2題だったのにこの中問はこの2つしか取れてないというウルトラCでした。
3-Iの炭酸塩の解離圧の問題なんか54に似てるのありましたが、途中式まで書いて時間が足りずでした。

もちろんやってないよりはマシな点数が取れてるとは思うのですが、100選やった割には付け焼き刃すぎて歯が立たなかったような出来で少し不甲斐ないです。

15日目(65〜79)【2時間4分】

65)○ 66)△ 67)○ 68〜70)○ 
71)× 72)× 73)○ 74)△ 
75)× 76〜79)○
有機化学のゾーン。
パズル力よりも知ってるかどうかで決まった問題が多い印象があります。
慣れていれば5分で決着するくらいの軽めの問題もあり、終盤に来てタイムアタックらしさが出てきて燃えてきます。ここまでの難問ラッシュに比べるとやや物足りなさを感じます。
100選の有機が簡単っていうのは参考書界隈でまことしやかに囁かれているらしいですが、自分もやってみてそう感じました。

16日目(80〜93)【2時間14分】

80)○ 81)○※ 82〜84)○ 
85)△ 86)× 87)× 88)○ 
89〜91)× 92)○ 93)△
高分子のゾーン。
81)で超基本問題なのに東大模試で間違えてしまったセルロースの構造が出てきて『あ!』となりました。糖、アミノ酸脂肪酸あたりはあまり難しい問題はなかったと思いますが、セッケンとポリマーはチンプンカンプンでした……。受験生のときからそうだったのでまあそれはそうという話なのですが。×の問題は単純知識と現象把握、計算力のすべてが必要な差がつく問題だと思うので、上位者でも挑戦する価値があります。


ここまで理論無機有機高分子の主要4科目の93題で、


24時間5分


終わっていい?


残りは実験問題です。

17日目(94〜100)【49分】

94)○ 95〜100)×
実験のパート。
基本的手技はセンター化学でも聞かれる内容だからなんとかできるものの、各論的な手技はお手上げ状態です。少し考えてわからなかったらすぐに答えを確認したためこのタイム。最後は無意識に巻きになっていたことは否定できません。

結局、100題で、

24時間54分

でした。100選を1周するのは、100km走るくらいキツいということですね。

演習を終えて

受験化学の勉強で何をやるか

結論、{新演習または100選} をやれば良いと思います。僕が10年前にタイムスリップするなら、「リードα → 原点から・100選 → 新演習」のルートを高3夏までに終わらせて秋からKADOKAWA鉄緑会東大化学をやれと言いますね。

受験勉強、特に理数系科目においては、具体的な演習問題の量も大事ですが、それと同等以上に、多くの問題に適用できる抽象的観念の理解も重要です。後者を早期に獲得しておくことで、実力涵養にかかるコストを大幅に減らすことができるからです。

「量が質に転化する」という言説は、この抽象理解を圧倒的演習量から帰納的に導いているもので、命題として真ではあると思いますが、受験にはタイムリミットがありますし、全員が全員物量に耐え切れるわけではありません。抽象観念の理解の助けを他人から得ることができるのであれば利用すべきです。学校の先生、友達、予備校の先生、学習参考書、Youtuberなどなど。

これに関し原点からの化学シリーズが本当に良かった。10年前に出会いたかった。化学から逃げない姿勢を貫きながらも、できるだけ僕たちシロートがイメージしやすいような説明が心掛けられていて、かつ問題もついてる。大ッッ変に化学への理解が深まりました。100題の難問に、同じ著者による同じ語り口での詳細な解説が施されている100選も右に同じ。原点からの化学が肌に合った人にとっては原点からの化学・100選の組み合わせ、かなりオススメです。僕の時代の僕の高校では、上位勢の定番は新演習と新研究のコンボだったのですが、今からやり直すなら一周めは駿台で固めるかなあ。まあ、時間あったら新演習を足しましょうかね。

新演習と100選の個人的な比較

新演習は現役時に1~2周やってそれきりなのでエアプです。今現物をパラパラめくりながら比較しています。

100選 新演習
難易度
標準~難
標準~難
大問100題
中問331題
参考書
原点からの化学
化学の新研究

100選にはない「○○電池 ○○滴定(○○には色々な横文字が入る)」「ヨウ素分配平衡(原点にはある)」あたりが差別化ポイントでしょうか。あと無機物質と合成高分子の各論問題の種類・量も新演習>100選のように見えます。有機化学★★★問題なんかも100選にはないかも。たぶん1980年代と比べたら有機化学の入試問題そのものが難しくなってるんだろうなあ。その辺が内容的な違いでしょうか。
量的には、新演習は25時間では1周できないし100選のコスパが良いでしょう。

まとめ あらゆる受験生にオススメです

軽〜い暇つぶしのつもりで始めたのですが、これは趣味に昇華するかもしれません。
暇つぶしといえば、最近youtubeで参考書レビュー観るのにハマってます。なんかやった気になるのが自分の心を埋めてくれます(オイ)。こういう受験生って多いんじゃないでしょうか。youtubeだったり書店だったりで参考書を読んだ気分になって、他人のレビューにはえ〜そうなんかと納得しちゃう。100選、難しい難しい言われてますよね。やる前から萎えちゃって手を出さない人も多かったのではないでしょうか。僕もそうでした。

受験生の皆さん、この記事を読んでみて、どう思いましたか?

これ本当なんかなあと不思議に思ったことでも、やってみたら自分にとっての答えがわかるわけです。これが大学での学びです。受験生の皆さん、これからもお互いのステージでこれから頑張っていきましょう。


それでは皆さん、次は、「新 物理入門問題演習」タイムアタックでお会いしましょう。

おまけ

遺伝子が35000個なの、時代を感じますねぇ(研究が進み、ヒト遺伝子の数が正確に数えられるにつれ、その数は〝減ってる〟)

*1:それ数弱って言うんじゃ・・・

*2:いや、今回の模試は自己採点で30/60いってるか怪しいくらいの出来なので一切無双していないんですけどね